伝えることの難しさ

夏休みから怒涛の教員研修が続き、最近では保護者向けの講演もとても多くなってきている。「こんな私でも呼んでいただけるのであれば・・」という思いで、お引受けさせていただいているけれども、なかなか満足できる研修や講演ができない。

今日も、某小学校でのPTAの講演をさせていただいた。だけれど、終わってから「あの言い方よりもこうした方がよかった」とか、「あんな言い方はないだろう」とか、自分へのダメ出しがたくさんでた。

こういうことを伝えたいと思っても、それをことばで正確に伝えることが難しい。受け手の方の状況も影響を受けるときがある。なので、自分に起こった気持ちや思いを正確に、純粋に伝えることは、本当に難しいと思う。簡単なようで、極めるとなると本当に難しい。

今日、誤解なく伝えられたかな~という点では、まさに「10点」。「そんなことないよ」と先生方はおっしゃってくださるけど、自分として許せない。伝えたいことの「言葉」が自分として納得できなかった。

一対一の面接では、そこらへんも扱えるけど、一期一会の場面ではそうもいかない。だから難しい。

保護者の方への支援も、まだまだだな・・・と思った一日でした。

スクールカウンセラーについて

スクールカウンセラーとして学校現場に入るようになって今年で10年目。

1年目の時に比べれば少しできるようになったところもあるけれど、「まだまだ自分は力不足だな・・・」と感じさせられる子どもたちとの出会いが次から次へとあり、それが大変でもあり、そしてこの仕事を続けていっている楽しさでもある。

10年の間、教育委員会などが行うSC研修、そして臨床心理士会が行っている研修など、多くの研修に参加してきた。ただ・・・私はその内容自体をもう見直すべきであると考えている。

私がこれまでに体験してきた研修は、講演を聞いて、教育委員会の説明があって、そしてSC同士グループワークをやって、それぞれの活動を報告して、どんな意見が出てきたか全体でまとめるといったグループワークをやって・・・という内容がほとんどだった。

最近では少し変化してきているが、数年前はこうしたグループワークをやると、「先生方が子どもの情報をくれない」という意見に代表されるように、「学校がSCを活用してくれない」という意見が多かったように思う。SCが機能できない学校の問題は、学校だけの問題ではない。確かに前任SCが学校でトラブルを起こして、そのマイナスからスタートしているケースも増えている。学校だけが変わればいい問題なのだろうか。物事の解決は双方から考える必要がある。とすれば、「学校に信頼されるSCとはどのようなSCか」「どのような動き、関わりをすれば、学校に活用されるSCになるのか」という、SC自身の在り方にも多くの課題があると考える。

コンサルテーションはSCの相談業務の中で非常に重要な活動である。しかし、なぜSC研修などで、そこらへんが十分に研修されないのか、そしてどうあるべきかが議論されないのかと思う。

SC研修は体系的になされるべきで、2,3年かけてこうした力量がついた「SC像」というビジョンのもとに研修が組まれる必要があると考えている(すでにそうした研修スタイルを実施しているところもあるそうだが・・・)。その中に、コンサルテーションや危機介入などが含まれる。だけれども、単年度のいきあたりばったり的な研修が多いと思うのは私だけだろうか。グループワークをやること自体はいいのだが、「お互い大変だよね」というピアサポート的な時間に終わるのなら、別の機会にやればいいと思う。

私の研究では、教師のコンサルテーションに関する評価はシビアであった。SCの活動はコンサルテーションだけではないが、スクールソーシャルワーカーが今年度から導入され、SCを囲む状況は年々変わりつつある。SCはこのままでいいのか・・・と思う。我々SCはどのように力量を高め、子どもたちや教師、保護者のよりよい支援者になれるのか、もう少し厳しく自分たちの仕事の在り方を見つめなおさなければいけないだろう。それには研修の在り方についてもっと議論される必要があると思う。

障がいのある子どもの心のケアに関する研修会のご案内

財団法人静岡総合研究機構の研究助成を受けて、静岡県で東海大地震が起きた時に、障がいのあるお子さんにどのような心身の変化が起き、それに対して家族がどのように対応すればよいのか、事前にどのような準備をしておく必要があるのか、などについて学ぶ研修会を行うことになりました。ぜひ多くのご家族、そして学校関係者の皆様のご参加をお待ちしております。

********************

「災害時における障がいのある子どもの心のケアについて」

対象:障がいのある子どもを持つ保護者、学校関係者(教師、カウンセラー、相談員、支援者など)、障がいのある方の施設関係者、障がいのある子どもと接する機会の多い地域の方など

日時:2008年11月30日(日)14:00~15:30

場所:マビック(静岡市視聴覚センター)2階 第三研修室

*駐車場はほとんどありませんので、公共交通機関をご利用下さい。

講師:小林 朋子

定員:30名程度

*会場の関係で定員になりましたらお断りする場合がありますので、お早めにお申し込み下さい。

参加費:無料

申し込み方法:静岡大学教育学部小林朋子研究室まで、FAXもしくはMAILでお申し込みください

FAX:054-238-4703

mail:kobakenshizuoka@gmail.com

FAXもしくはMAILには、以下の内容をお書き下さい。

<保護者の方・地域の方>→お名前、ご住所、電話番号もしくはMAILアドレス

<学校関係者、施設関係者>→ご所属、ご連絡先

申し込締切:2008年11月25日(火)まで

主催:静岡大学教育学部附属教育実践センター 小林朋子研究室

後援:静岡県LD・周辺児者親の会きんもくせい

文部科学省へ

先日、日本心理臨床学会の鶴先生、日本チームリーImage010 ダーの冨永先生と文部科学省に行ってきました。5月の日中首脳会談で、日本から中国への支援を福田首相が申し出て、その中に心のケアに関する項目が含まれたことから、状況と今後の方向性について話し合うためです(冨永先生のブログ「ストレスマネージメントとトラウマ」をご参照ください)。

初めての文部科学省だったのでちょっとドキドキしましたが、私は被災地に入った数少ない者として、避難所の子どもたちの様子についてお話しさせていただきました。第二次派遣を終えて日本に帰ってからも、いつも心の奥底で、避難所で出会った子どもたちが少しでも安心して暮らしていることを祈っています。なので、今後の支援活動の方向性がとても気になっています。何らかの形で継続的に被災地に入れるように、”あきらめずに”方法を模索したいと考えています。

今日の静岡の夕日はとてもきれいでした。あの太陽を子どもたちも同じように見ているんだなと思いました。第一次、第二次派遣を通して、私自身が大きく変わったと思うところは、人種とか国とかそうしたカテゴリーが私の中になくなったということ、人という存在がとても愛おしく感じられたということです。

「仏教で言う「苦」を味わった人間は国境は関係なく、同じように苦しいんだ」という、当り前のことを心の底から感じられたのです。人間は「同じ」なんだ。そして、いろいろな苦がありつつも、その中をどうにか生きようとする人間という存在が心から愛しいと思えたのです。だから、私はあらゆるものを超えて、同じ地球に住む人間として支援できたらいい、そうした「器」の臨床家になりたいと今、強く思っています。

まだまだそこに至るためには多くの修行をしなければいけませんが・・・

どうか暖かく見守って下さい(笑)

報告会

おととい、四川被災地への心のケア支援チーム第二次派遣から戻ってきました。
早速、個別にメディアからの問い合わせがあり、そして学生からも被災地での活動の様子をぜひ聞きたいという要望が多数ありましたので、下記の通り、報告会を開催することにしました。
学生および学校現場の先生方の参加も可能ですので興味のある方はご参加ください。なお、この報告会は大学広報を通してメディアにも流す予定です。

報告会:
日時:7月15日(火)18時~
場所:教育学部附属教育実践総合センター3階(60名ほど入れます)

内容は、四川大地震被災地への心のケアチーム第二次派遣の内容についてです。
今回、日本チーム11名のうち私を含め3名が綿竹という地域のテント村で活動してきました。そこには1万人の人が避難生活を送っていました。
報告会では、子どもたちや被災者と接したVTRや写真を紹介しながら、被災地での現状についてお話しする予定です。

あと準備の関係で、恐れ入りますが学外の方、メディアの方は実践センター事務室に参加希望の旨をFAX下さい。FAXは、054-238-1071となります。

どうぞよろしくお願いいたします。

約束を果たすために

ただいま、成都にいます。明日、帰国します。

今日まで2泊3日で、綿竹という場所にある避難所に行って活動してきた。今回の第二次派遣では、前半は北京と重慶、そして後半は成都の西華大学での研修と私たちの避難所チームの2つに分かた。避難所チームは、高橋先生と黄くんと私の3名。

綿竹の避難所には1万人の人が避難していた。到るところに青いテントが続く光景はこれまでに見たことがないもので、気温は35度以上・・・。テントに入るとさらに蒸していた。

避難所では多くの子どもたちと遊んだ。そして遊びを通して、子どもの状況をアセスメントをし、そしてカウンセリング的な関わりをしていきた。もう、出たところ勝負のライブ。これまでの臨床経験を総動員して、遊びまくった(笑)。わからないところは、経験豊富な高橋先生がたばこを吸いながら温かく見守ってくれていたので(笑)、確認しながらできたという安心感があった。そして、高橋先生が「自由に、しゃおりんのやりたいようにやりなよ」という言葉でどんなに楽に動けたことか(笑)(日本チーム、そして中国の人たちからしゃおりんと呼ばれています。「小林」の中国の読み方です)。

印象的なケースは、3才と14歳の女の子・・・。3歳の女の子は、地震の時に幼稚園の先生がとっさに彼女を2階から投げて助かった子。退行と脅えがひどく、私が近づいた時は母親の腕の中から離れなかった。それをパンダのぬいぐるみを使って関わり、母親から離れて、自由に遊ぶことができるようになった。これは私の力ではなく、パンダのぬいぐるみの魅力とその子が持っていた力を引き出せだのだと思う。その笑顔に私の方も元気をたくさんもらった。

14歳の女の子は、みんなが集まっているのになんだか元気がないので、なんとなく気になって個別に声をかけた。「何かできることある?」と聞いたら、「一緒にテントに行こう」と誘われ、彼女の家族が暮らしているテントに招待を受けた。黄くんと二人でテントに行き、家族たちと話をした。いろいろと関わる中で、彼女とそのいとこの2人で個別に話をすることになった。予想通り、「何かある」感じで、でも今日私たちは避難所を去らなくてはいけない。関わりの加減にとても迷った。そして、いろいろと話しているうちに彼女がぽろりと泣き始めた。(今、このブログを書いていて、う~んうまく書けないので省略します笑)。最後に彼女から「また来てほしい」と言われた。人として、支援者として「また来るね」と約束した(臨床的にはいろいろとコメントがつく点だと思うが、その場面で最も適切なことばだと判断した)。

彼らの避難生活はまだまだ続く。来月には仮設に移れる予定だけれど、家、土地、そして家族や友人も失った彼らの生活はなかなか元には戻れない。ここ数ヵ月の支援ではなく、ずっと支援が必要である。中国の支援者とともに彼らを支援していきたいと強く思った。

継続した日本から支援を行うには学会や協会といった民間レベルの支援だけでなく、政府レベルの確かなバックが必要である。彼女との約束を果たすために、できることはやろうと思っている。そして、このブログを読んだ方々にもぜひお力添えを頂けたらと思う。

いよいよ被災地へ

重慶の西南大学での研修を終えて、先ほど成都に着きました。

研修では、支援者のケアとカウンセリング演習などを主に担当させてもらいました。中国の人たちにとても好評だったようで、とてもほっとしました。今回は、支援に当たっている人たちがとても疲れていることが印象的でした。もうすぐ2か月・・・。疲れるのも当然です。これから10年以上のケア活動があることを考えると、中国の支援者の皆さんが無理をせず支援を続けられるよう、私たち日本の仲間が何かできないかと思いました。そして、東海地震のことを考えると他人事ではありません。

西南大学のスタッフ、重慶周辺の支援者、学生たち・・・すっかり仲良くなりました(笑)。東海地震が起きたら、彼らは中国から助けに来てくれるような気がしています。あと、二次派遣のメンバーとも昨日、全員合流しました。冨永先生、高橋先生、吉先生と久しぶりの再会で、ちょっと気が抜けました(笑)。こんな風に海外での支援活動を行うと、本当に「仲間」だなと思えます。こうした活動に参加させてもらい、一生ものの仲間を得られらことに感謝だなと思っています。

研修を終えてからの6時間のバス移動・・・被害者支援は本当に体力勝負・・・。

ただいま、2:57・・・・明日は、7:30には集合・・・

午後からは2つに分かれて、私は綿竹に入ります。

ここは学校をはじめ多くの建物が全壊した地域です。がんばってきます。

再び、四川へ

再び、四川に行ってきます。

以下、第二次派遣の概要です。

**************************

中国四川大震災心のケアチームの第2次派遣について

日本心理臨床学会・理事長 鶴光代/日本臨床心理士会・会長 村瀬嘉代子

                                              日本心理臨床学会(会員数20,148)は、西南大学心理学院(重慶)の要請を受けて、中国四川大地震によって被災した人たちへの心のケア(心理援助)に携わる心理専門職者・学生ボランティアに対して、災害が多い日本の心理援助に関する専門的知識を伝達するため、臨床心理士4名を5月26日から1週間、重慶、成都、徳陽に派遣しました(第一次派遣)。その結果、心理援助のニーズは高く、中国の心理専門職者・学生ボランティアへ、さらに専門的知識を提供する必要があると判断し、臨床心理士9名と通訳学生2名を派遣することを決定しました(第2次派遣)。期間は、71日~78日の間で、北京グループ(5名)と重慶・西南大学グループ(6名)が前半それぞれに活動し、成都にて合流し、後半は、被災地での心理援助のあり方を助言・交流する予定です。

なお、今回の派遣は、中国心理学会と中国西南大学(重慶)の要請によるものです。これを受けまして日本心理臨床学会と日本臨床心理士会は、民間支援の形で災害ストレスケアの専門家を中国に送り、先方の心理専門家に対処法を伝達することに致しました

1,チーム名:中国四川大地震心のケアチーム日本

2,派遣メンバー ◎第二次派遣総括リーダー  ○班リーダー

冨永良喜(兵庫教育大学大学院・教授)

高橋 哲(芦屋心理生活研究所・所長)

吉 沅洪(広島市立大学・准教授)

矢島郁代(新潟県柏崎市元気館)

高橋光恵(兵庫県スクールカウンセラー)

○小澤康司(立正大学・准教授)

  小林朋子(静岡大学・准教授)

  岡嵜順子(予防医学心理学研究室代表)

  織田島純子(新潟県スクールカウンセラー)

  黄 正国:広島大学教育学部学生(通訳)

  張 磊:東京大学教育学研究科博士後期課程学生(通訳)

派遣期間:7/1~8日

3,活動予定

1)北京にて、心理専門職者に、阪神淡路大震災・新潟中越地震などでの心のケアの理論と実践方法について、伝達する.

2)西南大学(重慶)にて、心理専門職者・学生に、避難所での心理援助の実際や災害後のカウンセリング実習など、実践的研修を行う。

)中国心理学会、西南大学がサポートしている被災地を訪問し、助言交流する。

***********************************

私は、前半は第一次派遣でお世話になった重慶にある西南大学で研修を担当させていただきます。その後、冨永先生たちの北京チームと合流して、成都に向かいます。その後、後半は高橋先生をはじめ4名で、綿竹に入り、避難所を中心に活動する予定です。綿竹は、学校など多くの建物が倒壊し、多くの方が亡くなったところです。そして、今でも多くの方が避難生活をしています。

現在の気温・・・重慶は35度、成都は33度・・・非常に暑いようです。この中で避難生活を送っている多くの被災者の方たちのことを思うと・・・。

心静かに・・・

そして、スーパーヴァイザーから頂いたことば・・・

[身の丈の無力感を抱えながら、そこに身も心もしっかり自分らしく居ること」

これを胸に活動してきます。

また帰ってきたらブログでご報告します。

帰ってきました

中国・四川大地震の心のケアチームのメンバーとして派遣され、無事に日本に戻ってきました。活動は主に重慶にある西南大学で心のケアにあたる中国の支援者に対する研修、西南大学の教員そして学生ボランティアに対してのスーパーヴィジョンをしてきました。

メディアにも取り上げていただきました。

朝日新聞 http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200806010007.html

日本経済新聞 http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20080602AT1G3101402062008.html

http://www.nikkei.co.jp/kansai/news/news000244.html

神戸新聞 http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0001076752.shtml

http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0001103387.shtml

急ですが、6月7日(土)に都内でこの活動の報告会をやることになりました。

心理臨床学会HP http://www.ajcp.info/

関心のある方はぜひ聞きに来て下さい。

精一杯やれることを

中国に行ってきます。

詳細は、日本心理臨床学会公式HP http://www.ajcp.info/index.htm

この準備にあたって、がじゅまるクラブでお世話になったSさんには保健所に問い合わせて、短い時間の間に最低限必要な薬やワクチンを調達していただいたり多大なるご協力を頂きました(Sさんお忙しい中、本当にありがとうございました!!)。それと、コバ研の太田先生と望月さんからは現地で子どもたちと遊ぶためのおもちゃや道具を頂きました。

被災した方々のために、自分ができることを精一杯やってこようと思っています。

それでは、行ってきます。