プロジェクト、第一段階終了

東海地震に備えた心のケア体制のためのプロジェクト。

ここでも何度か紹介しましたが、その第一段階が終了。

防災センターとの協働のリーフレットが、今日のミーティングの議論を経て、「完成!」

明日、印刷屋さんに出します。

そして、次のプロジェクトの内容についての議論もできました。

ミーティング終了後、プチ打ち上げ。

「明日から仕事だから、ちょっとだけ・・・」のはずが、あれよあれよ・・・飲む、飲む、飲む(笑)さすが、別名「体育会系臨床心理士の会」です。

これまでの労をねぎらいながら、今後のビジョンを議論する。

楽しくて、あっという間にみんなで日本酒をぐびぐび飲んで、語りあっていました(笑)

「あ~いいメンバーと出会えて、こうした仕事ができて幸せだな~」としみじみ実感しながら、帰宅の途につきました。

これまでの日本の災害支援の経験を活かしつつ、エビデンスに基づいて、静岡から被災者支援のモデルを全国に発信できるよう、みんなでがんばります

早く進めなければ

今日は、夕方からずっと伊豆の方で震度1の地震が続いている。

TVの画面にひっきりなしに地震速報が流れていたので、「どこらへんなんだろう」と思い、PCを立ち上げ気象庁のHPで地震情報を見ていたところ、ゆら~っとした揺れを感じた。

「震度1か2かな・・・」

そのまま気象庁のHPを見続けていたら、その揺れが伊東で震度5弱だったことがわかった。すぐにTVをつけたところ、NHKはすでに映像が切り替わっていて伊東の様子を流していた。

映像を見ながら、8月の駿河湾を思い出した。今年に入り、ここ数年と比べて、静岡県内の地震の揺れがすこし大きい感じがする(私だけかな?)。

TVを見ながら、「いやだな・・・」と、思った。

そして「あと、もう少し待ってほしいな・・・・」と。

8月の駿河湾沖地震が発生した時、私はカナダから戻る機内の中にいた。ハード面の防災体制が進んでいる静岡でも、子どもたちの心のケアの体制作りは進んでいないのが現状であった。県の各部署でマニュアルやガイドラインが作成はされているものの、その内容が現実的ではなかったり、部署ごとに作成されているために「横」の連携ができていなかったり、さらに人事異動でマニュアルを作成した方が移動したためにそのガイドラインやマニュアルがその部署に存在していることすらも知らなかったなど・・・課題点がいろいろある。

でもようやく7月下旬に、県教委、精神保健福祉センター、県臨床心理士会で初めての会合が持てた。様々な方の力添えもあり、ようやくここまで来たという感じだった。スタートラインにつけただけだけれども、とてもうれしかった。でも大規模災害ですぐに動ける段階まで話は詰められていなかった。なので機内の中で、静岡で日々一緒に過ごしている人たちの無事であることを心から願い、それと同時に「なぜこのタイミングに起こるんだ。なぜあと少し地震が起こるのを待ってくれなかったのか!」と、くやしい思いが駆け巡り、涙が止まらなかった。

静岡の子どもたちが支援を受けられるシステムを、早く作らないと・・・

四川で多くの子どもたちと接して、経験したこと、学んだことを、静岡の子どもたちのために役立てたい・・・そんな思いが3度の四川での支援活動を通して、強く私を突き動かす。

そんな思いに共感してくれた、県臨床心理士会被害者支援委員会の有志メンバーで今年度から様々な取り組みを始めている。

まずは静岡大学防災総合センターの協力を得て、養護教諭向けのリーフレットの作成。これはケアを担う人たちの啓発が目的。

でもそれだけでは不十分。

問題は県士会の体制作り、各行政機関との連携・・・。

それには正直、資金もいる。理想論だけ並べるのではなく、現実にどう進められるかという点で手立てを考えなければと思った。

そこで、日本臨床心理士会資格認定協会の研究助成を申請し、資金を得ることにした。そしてみごと採択され、11月からそのプロジェクトが進み始まっている。

教育委員会との連携に関する協議も始まり、来年5月から行われる予定のカウンセラー向けの研修会の内容もプロジェクトメンバーでディスカッションが始まっている。来年の今頃には、一応、静岡県内で大規模災害が発生した時の子どもたちの心のケアに関する体制の「基礎」ができている予定だ。

今は、多くの方々の協力や賛同を得て、仲間と一緒に進めているところなのだ。

だからこそ、静岡は大きな地震がいつきてもおかしくないとはされているけれども、「あとすこし時間をください・・」と、神様に祈るような気持ちでいる。いつ来てもおかしくないのなら、せめて体制ができてからに・・・。

地域の人たちのためにも、伊東の地震が早く収まってほしいと願っている。

中越地震から、5年

ただいま、新潟県中越に来ています。

今年は10月末、そして11月中旬と連続して中越の小学校2校を訪問させて頂いています。

中越は紅葉がとてもきれいです。紅葉を見ながら、ふと中越地震の時に災害ボランティアとして被災地に入った時のことを思い出しました。中越地震は10月23日に発生したので、ちょうど5年前のこと。あの時も、くずれた山が紅葉で色づいていて、その光景がなんとも言えない気持ちにさせたことを覚えています。

5年経った、10月23日。アニバーサリー反応がでやすい時期にあるにもかかわらず、その当日に余震がありました。心身の反応がでてきてしまうのではと心配したのですが、幸いなことに目立った変化は見られなかったようです。ただ、先生方同士でも、「よりによってどうしてこの日に起きるのだ」と、口々に震災当時の話になったようです。

このブログでも紹介していますが、震災当時からずっと中越の学校に定期的に訪問して、復興していく過程を追っています。昨年、そして今年は科研を頂いて、研究を進めています。来年は・・・と思っていたのですが、中越の先生方から「来年はもう来ないの?」と言われると(!)、そして子どもたちや先生方の話を聞いていると、やはり可能な限り、できれば10年近く追っていってみたいと考えています。

阪神淡路大震災が15年。でもいまだに心のケアを担当する加配教員が設置されています。震災当時に生まれていない子どもたちが学校に入ってくるくらいの時間が流れても、第二、第三の要因が様々に、そして複雑に組み合わされて、静かに影響が残っていくのでしょう。なので、今年度で科研は終わりますが、長期的なテーマとして、自腹で細々と中越の学校訪問をこれからも続けていこうと、決心したところです(笑)。

5年前、当時勤めていた国際武道大学の教え子、ヤス、だいすけ、ゆみ、どいちゃん、私の5名で中越に入りました。私にとってもとても学びの多い支援活動で、5年経った今でもたくさんの思い出が思いだされます。

さらにもうしばらく・・・中越地震の復興を見届けていきたいと思っています。

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左から、やす、ゆみ、私、だいすけ、どいちゃん なつかしいな~(笑)

心のケアワーキング

今日は日曜日。

けれども、静岡市内某会議室に集まって、お昼から21時まで、あーだこーだと議論、そして執筆作業をしました。

それは、養護教諭の先生向けの「災害発生時の心のケアに関するリーフレット」作成のワーキング(WG)。WGメンバーは、被害者支援の経験豊かな静岡県臨床心理士会の被害者支援委員会の精鋭部隊。様々な経験や知識などが出され、効率のよい議論ができて、そして何より作業が早い!さすが、被害者支援をやっているだけあって、行動する時はささっと動けます。一日、がっつりと時間をかけたということもあって、だいたいの内容は書き上がりました(笑)

このWGは、静岡大学防災総合センターのプロジェクトの一つとして位置づけられていて、そこに私たちメンバーが技術協力をしています。できあがったら、県教育委員会を通して、県内の養護教諭に配布される予定です。

サイズは、A5サイズで、フルカラー、しかも水に強い紙で作ります。保健室の救護バックに入れておいてもらえれば、何かあった時にすぐに取り出せます。雨や、取り出しやすさなど、災害発生時の状況を想定して使いやすいように作成されています。内容も、「ここだけは押さえておいてほしい」という、基本的でかつ実践的なポイントを図を入れて解説するようにしています。手前味噌ですが、結構いい感じでできあがっています

東海地震の心のケアに関する取り組みの第一歩。

出来上がりが楽しみです

PS 教育学部も秋の気配です。キンモクセイのいい香りがしています。

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御前崎での活動

駿河湾地震は、中越地震と同じ規模だったそうですが、被害が少なく済みました。これも普段の防災意識の高さが大きかったと思います。

私はちょうど、APAを終えて、バンクーバーから成田に向かう飛行機にちょうど搭乗するために並んでいた時に、空港のTVが速報としてテロップを流しました。それに気づいて、すぐに日本に電話をしたところ、静岡で地震があったとわかりました。連絡を取りたいと思いながらも、航空会社の人からは「すぐに飛行機に搭乗して!」と言われ、なんとも言えない気持ちで飛行機に乗りました。10時間近くのフライトでは、一切、情報が入らず、同僚、ゼミ生や卒業生、T中の先生方や生徒たち、カウンセリングで関わってきた卒業生たち・・・いろいろな人の顔を思い浮かべました。そして四川の情景が浮かび、あのような光景が静岡で広がっていて、みんなにもしものことが遭った時に、私はそれに耐えられるだろうかと考え、涙が出てきました。

本当に、なんとも言えない、本当にいやな時間でした。情報が入れば、杞憂になるのですが・・・。成田に着いて、情報が入ってくると、思ったよりも被害がなく、とてもホッとしました。情報の大切さを身にしみて感じました。

そして先週の土曜日に、危機管理局のアドバイスを頂き、静岡県臨床心理士会の代表幹事の人文学部の江口先生、会員の石渡さんの3名で、御前崎災害ボランティアネットワークの方と一緒に区長宅を回る活動についていかせて頂きました。

御前崎市では、海から山に向かって帯状に被害が集中していました。「断層なのかな」と話をしていたのですが、よくわかりません。被害は、屋根のかわらが落ちたり、割れたり、ゆがんだりしたり、建物に亀裂が入ったりするものでした。落ちたかわらで、人的な被害が出なかったことが何よりでした。P81503331 P81503271

巡回しながら、県士会被害者支援委員会で準備した資料(ストレス反応とその関わり方)をお渡しする活動をさせて頂きました。
その中で、少ない数ではありますが、夜眠れない、子どもがべったりくっついてきて甘えてくる、地震発生時にいたトイレに入れない、といった訴えが出てきました。
ただ、いずれも生活に支障がでるレベルではなかったため、その場で簡単にアドバイスをして、もし気になるような場合にと、牧之原市の相談窓口が書いてある資料をお渡ししました。
またこの活動の様子について、NHK静岡の記者の方がまとめてくださり、次の日の全国版のニュースで流れたそうです(早朝だったそうで、私は見ていないのですが・・・苦笑)

また今日になって、健康相談センターの保健師さんより連絡を頂き、県士会で個別相談に対応してもらえるのかという問い合わせがありました。少しではありますが、センターに相談が来ているようで、保健師さんたちが対応にとまどっているようでしたので、電話にてコンサルテーションを行いました。

まだまだ心のケアの体制にも課題がたくさんあるのを実感した活動でしたが、まずは今回の地震を足掛かりにして、「何ができるか」を県内の臨床心理士の中でも考えていけたらと思っています。

今回、思ったのが、自主防災組織や災害ボランティアネットワークの活動が素晴らしいことです。今回、ご一緒させて頂いた御前崎地区災害ボランティアネットワークのOさんは、地域のキーパーソンである区長さんや組長さんとしっかり顔が見える連携をしていて、気軽に話ができていました。こうした平時のやりとりがないと、こうした緊急時に動けないんだなと思い、その重要さを実感しました。

今後の地震に備え、いかに顔がわかる連携を進めていくか・・・これを一つのミッションとして頑張っていこうと思っています。

感謝

今日から、夏の教員研修の行脚がスタートしました。

今年の夏は、来週から海外出張と言うこともあって、なかなか時間が取れなかったのと、中国への出張も当初は8月に予定されていたこともあって、かなりお断りさせて頂きました(申し訳ありませんでした)。そのため、今年は例年より少ない数に抑えられています。

今日は、浜松市全体の養護教諭と保健主事の全体研修会に参加された約250名の先生方にお話しさせて頂きました。テーマは「災害時の心のケア」です。研修では、基礎的な心の変化について説明した後、子どもたちのVTRを見て頂いて、そのイメージを作って頂くようにしました。短い時間にあれこれと説明されると、かえってよくわからなくなることもあると思います。そのため、本当に重要なことを何度も繰り返しお伝えした上で、実際の様子を見て頂くと記憶に残りやすいと考えました。夏休みに入っても、先生方は毎日、研修、研修、三昧ですから、覚えていて頂けるような工夫が必要です。

そして、研修会の休憩時間と最後に、四川省の子どもたちのための募金を呼びかけさせて頂きました。

さすが、養護教諭と保健主事の先生方です。

あっという間に、たくさんの募金が集まりました。

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本当に、浜松の先生方に感謝申し上げます!

まだまだ、募金を受け付けておりますので、ぜひご連絡ください!

kobakenshizuoka@gmail.com

四川大地震で被災した子どもたちを、あなたの手で、支えてみませんか?

四川大地震では、多くの子どもたちが、両親やきょうだい、そして友だち、先生を喪いました。そして、その悲しみの中でも一生懸命生きていこうとしています。しかし、地震の影響で両親を喪ったことなどから、経済的に厳しく、高校に行って勉強することも、そして鉛筆やノートの用意することもままならない子どもたちも多くいます。学びたいけど、学べない・・・こうした子どもたちを、あなたの手で支えてみませんか?

世界のどこに生まれてきても、そしてどんな状況でも、必死に生きている子どもたちがいます。私たちも東海地震が予測されている中、被災するということは、決して他人事ではありません。

そんな、子どもたちのために、あなたがほんの少しでできる支援があります。 9月に中国・四川省にある中学校を訪問します。そのときに、皆様から頂いた募金を子どもたちに手渡したいと考えています。

その様子などは、静岡大学教育学部小林朋子研究室ブログ(携帯対応)(ある日のコバ研 http://kobaken-shizuoka.cocolog-nifty.com/blog/)で、動画や写真をUPして報告いたします。「募金して何に使われたかわからない」と感じている人もいるかもしれませんが、今回頂いた募金は被災した子どもたちの元に確実にお渡しいたします。

決して大袈裟なことではなく、みなさんがジュース一本、タバコ1箱をちょっとだけ我慢して、そのお金をちょっとだけ子どもたちのために使って頂けたらと思います。そのお金が、世界の子どもたちを少しだけハッピーにすることができます。どうか子どもたちのために、ぜひご協力をお願いいたします!

静大生、そしてポレポレクラブメンバー、がじゅまるクラブのみなさん、そして私や研究室に関わりのある方、そしてこうした支援に関心のあるすべての皆さん、どうぞよろしくお願いします!

連絡先:静岡大学教育学部小林朋子研究室 kobakenshizuoka@gmail.com

山本尚乃   平岡紗季(教育相談学専修4年生)

藤岡優子  中林和美(教育相談学専修3年生)

柏木勇登(総合科学専攻3年生)

小林朋子

綿竹チームの再会

今、四川から心のケアに関する訪問団が来日している。JICAが中心となって、今後5年間、四川での心のケアを支援すると言う事業の一環だ。先週、その訪問団とのお食事会に参加するために神戸に行ってきた。

その席には、神戸の震災で家族を亡くした大学院生なども参加していて、その当時の話をしてくれたりした。四川から来た方たちが、14年後に子どもたちがこのように体験を克服するとよいという見通しを持ってもらう意味でも、彼女の語りはとてもよかった。

兵庫県はとてもユニークな教員組織をもっている。教職員組合と教育委員会が協働して、「EARTH」という組織を作り、被災地での教員によるケアに関して、教師の立場でできる様々な支援を行っている。すでにスマトラ島大地震の時にも、神戸の先生を派遣して、現地の先生方の支援を行ってきたと言う。今回も、EARTHは四川の先生方や子どもたちをサポートするために、JICAと組んで活動をしているそうだ。食事会には、関連する先生方が来ていた。すごく、熱くて、面白い方たちばかりだった(笑)。言葉はわからなくても、子どもたちはこの先生方の周りに集まってくるだろうな~と思った。

この日は、第二次派遣の時に綿竹避難キャンプに派遣された3名(高橋先生、黄くん、私)が久しぶりにそろった。あの言葉を失うほどの倒壊した町並み、そして3万人が生活をしていた避難キャンプでの活動、言葉が通じない中での活動の中で、3人で力を合わせて活動したこと、一緒に遊んだたくさんの子どもたち、そして被災体験の語り・・・毎日、35度を超える気温の中で、被災した人たちと一緒に過ごした。3

3次会では最終的にこの3人となったので、まったりと避難キャンプでのことを語り合った。Image111

そして、次の活動のことについても・・・

とにかく、綿竹でのことを思い出して、語り合える唯一の3人でもあるから、ずっと話は尽きなかった。

思いは通じる

今日、1本の電話が研究室にかかってきた。

ある財団からの連絡。

私が研究代表者として申請している研究助成について「内々定」がでて、最終的な助成額を決定するためにヒアリングをしたいとのことだった。いくつかの質問に答えながらも、自分の中に湧き上がってくる気持ちをこらえるのに必死だった。

電話をおいた瞬間、

「やったああああああああ!!!!!!!!!!!

まさしく、「狂喜乱舞」(笑)

同じく研究室で、卒論のテーマをどうするか悩んでいた、ひさの、柏木くんはびっくり。

「先生がこんなになるのを見るのは初めてです」と、ゼミ生に言わせるくらいの喜びようだった(笑)。

こんなに喜んだわけは・・・

助成が最終決定すれば、四川の被災地に行けるのだ。

今までは祈ることしかできなかったけど、また四川に行ける。

うれしい、とにかくうれしい!!!

ずっとずっと・・・また行きたいと願っていた・・・

願うところに幸運はやってくる、思いは通じるものなのだと、今日、あらためて思った。

ワークショップ

今日、日本心理臨床学会の春季ワークショップで、「緊急支援」の講師を担当させて頂きました。

最初、オファーが来た時に、「え?!なんで私が?!」と動揺し、すぐに日本チームリーダーの冨永先生に連絡。断る気まんまんでいた。でも、冨永先生曰く、「断っちゃダメだよ。やらなきゃ、もう」の一言。ああああ・・・・・(涙)。恐れ多くて、臨床心理士の方にレクチャーできるような力量なんてないのに・・・。でも冨永先生の一言に反する勇気もなく、そして日本チームのメンバーの「やれるよ!がんばれ!」という暖かい応援もあり、がんばってみることにした。でも、正直、今日まで「やれるか?!」という思いもあった。かろうじて、冨永先生が「しゃおりんも講師をやらなきゃ。だから、みんな助けちゃダメだよ」という暖かくも厳しいご指導を頂いている中、高橋先生が「初めての講師なのに、最初から1日研修は大変だよ」ということで、お手伝いしてくれたことが救いだった。

このワークショップの案内は、1月に原稿締め切りだった。その時にすでに新型インフルエンザの対応も視野に入れておいた方がいいと考えていたので、以下のような案内を出していた。

「地球規模の環境変化により、地震や水害など様々な災害が発生しています。そして、いつ発生してもおかしくないとされる新型インフルエンザの発生など、コミュニティを大きく揺るがす事態において臨床心理士が心のケアを行うことが社会的にも求められてきています。そこで、本ワークショップでは、災害時の臨床経験豊かな高橋哲氏を交え、明日急に支援を行うことになった時にも、すぐに活動できる基礎的な力をつけることを目的とします。内容は、①災害時の心理と対応方法、②支援者の心理、③チームによる活動、となります。」

そして、4月に入り新型インフルエンザの発生・・・。我ながらびっくりした。

研修の内容に関しては、私が四川に行く時、そして現地に行ってからとまどったり、不安に感じたり、「事前にもっと勉強しておけばよかった」と感じたりしたところを丁寧に振り返る作業から始めた。私が感じたとまどいや不安は共通の体験として、最初に被災者支援をする人に起こりうるものと考えたためだ。

そこで、初期から中長期のケアにかけて知識をたくさん伝えるよりも、初期のケアに限定をして、そこだけでも「やれる」感覚をどうつけてもらうかに焦点をあてることにした。 ここで活かしたのが、SSTの構成だった。

「災害直後の初期のケアに関するスキル」を、ターゲットスキルとして捉えて、SSTの授業構成を取り入れてみた。

まず最初に、高橋先生と私から、トラウマティックストレスや、初期に活用できるPsychological First Aid(PFA)、ストマネの話などをした。これがSSTでいえば、「インストラクション」「モデリング」。

そしてその後は、グループになって、心理教育の「リハーサル」をしてもらった。 リハーサルは、よりリアリティを感じてもらうために、日本チームのメンバーにJAPANのチームベストを持ってきてもらい、それを着てもらった。「JAPANチーム」の緊張感を少しでも感じてほしかったというものある。

リハーサルは、小中学校の子どもを持つ保護者向けの心理教育、時期は災害後1か月を想定した。どのように心理教育を行うとよいかについて、各グループで、いろいろとアイディアを出した議論がされていた。グループワークをした後に、時間の関係で1グループだけ前で実演してもらうことにした。くじ引きで、プレゼンテーションするグループを選出し、プレゼンから外れたグループには保護者役になってもらい、想定される質問を議論してもらった。

そして、プレゼン。グループのメンバー全員が必ずプレゼンテーションをしてもらうようにした。なかなか工夫されたプレゼンだった。そして質疑応答。さすが臨床心理士の皆さん、質問がなかなかリアルで手厳しい(笑)。プレゼンしたグループは、それに即答することが求められる。プレゼンをしたグループは、試行錯誤しながら、保護者役の人から出てきた質問に答えていた。

最後、全体で感想をまとめ、講師から講評として「フィードバック」を行いました

感想を書いて頂いたのを読ませて頂いて、「わかっているつもりでも、いざ説明するとなると難しかった」、「少しやれそうかもと前向きになれた」などの感想を頂きました。被災者支援は「私には無理」から、「私にも少しやれそう」と思ってもらえる研修が大切であると考えていたので、被災者支援に関するエフィカシーが少し高くなるお手伝いができたかなと思いました。まさに、SSTのテクニックが活かされたと言えます。

ただ、「勉強不足を痛感した」等、自分の力量の至らなさを書いてくださった方も多かったのです。でも私も同時に、「講師をやらせていただいたけれども、自分はまだまだだ・・」と思ったのが正直なところです。帰りの新幹線の中で、臨床の仕事に終わりはないということと、特にこの被害者支援、被災者支援に関しては、いつもこうした「自分はやれるのか」「自分のやっていることに間違いはないか」という不安はついてくる領域なのかもと、連想しました。だからこそ、支援者のセルフケア、支援者の支援が必要なのだろうなと・・・(一般的には、わかっていることなのですが・・・)。

ワークショップの最後に、「静岡で東海地震が起きたら、私たちをサポートしにきて下さいね。」とお話しさせて頂いた時に、拍手を頂きました。とても心強い気持ちになりました

静岡で残念ながら災害が発生した時に、日本全国から、そして世界中から、仲間が駆けつけてくれる・・・そんなあたたかい気持ちがまたふわっと湧いてきた、今日のワークショップでした。