新型インフルエンザが国内で広まってきている。
実は、私はこの心理学の道に入る前は、製薬会社の研究所で新薬の開発研究に携わっていた。その時代に、最も長い時間、研究に携わった新薬が抗インフルエンザ薬「リレンザ」だ。タミフルは服用だけれども、リレンザは吸引するタイプのものだ。すでに市場に出ているので、タミフルまでとはいかないけれど、お世話になった人もいると思う。
研究に携わっていた当時から新型インフルエンザの脅威は迫っていて、新薬開発のペースを上げて早く出すようにとプレッシャーがかかっていた。なので、先月、豚インフルエンザがメキシコで発生し、フェーズが4、5とあがっていった時には、「とうとうこの時が来たか・・・」と、複雑な気持ちでTVを見た。
神戸市では学校が閉鎖されて、高校生を中心に感染が広まっている。感染はしても、どうか亡くなる人だけは出ないで欲しいと思っている。身近なところでの感染は時間の問題なので、新型インフルエンザなどの感染症が引き起こすトラウマはこれまでに論じられているのかと思った。
APAが出している「Helping children cope with Disasters and Terrorism」を開いてみた。この本では、災害を「natural disasters」と、「Human-made disasters」に分けている。新型インフルエンザの場合、単純には「natural」になる。ただ先日、この新型インフルエンザが人為的に発生したものという報道も流れている。いずれにしても、感染症に関しては何の記述もなかった。そのことに驚いた。
バイオセーフティレベルが高いSARSやエボラ出血熱といった感染症がこれまでに起こっているけれども、その後の「心のケア」は行われなかったということなのだろうか・・・。地震やハリケーンと違って、PTSDにはなりにくいものなのだろうか・・・。いろいろな疑問が出てくる。
先日のミサイル発射実験、そして新型インフルエンザ・・・
今年に入り、様々な危機が起きている。ある意味、こうした危機発生時のケアについて、臨床心理士はそれを社会から求められ、それができるようにしておく、そんな新しい時代に入ってきたのかもしれない。